劇画界の両偉人から直接師事を受けた72歳の現役漫画家が描く劇画黄金期!
伊賀和洋先生の『劇画の神様 ~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』を読みました。
あの当時の「空気」から、あの作品の創作秘話まで。
それぞれが遺した数多くの著作を読んでみるのが一番なのはモチロンのことですが、
当事者とは違う、第三者の視点から両者のスゴさを知りたい方は、この本を読んでみるのが良いのではないかと。
後進の育成を目的とした「劇画村塾」の代表としても知られる小池一夫先生ですが、
もともとは漫画家の育成スクールよりも先に、富士山麓に劇画作家や編集者を住まわせるホンモノの「劇画村」を作るつもりだったって、まじですか?
そんな偉大なる巨匠たちの逸話が目白押しとなっている、
『劇画の神様 ~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』ですが、
じつはちょっとだけ、藤子不二雄先生関連のエピソードも載っておりまして。
劇中で紹介されていた、とあるトークショーでのちばてつや先生の話によりますと、
藤子不二雄先生、石ノ森章太郎先生、赤塚不二夫先生たちがまだ若かりし頃に、
漫画の神様・手塚治虫先生を囲む集まりがあったそうなのですが・・・。
『劇画の神様 ~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』226ページより
その集まりで、さいとう・たかを先生は、
遅れてやってきたにも関わらず、あの手塚先生の前で堂々とタバコをふかしていた・・・とのことでした。
す、すげえ・・・。
『まんが道』をさんざん読んでいる自分としては、
「手塚先生=神」という認識が完全にインプットされているので、このさいとう先生の行動は、まさに神をも恐れぬ行為に思えてしまう。
それこそ「若気の至り」というやつだったのでしょうが、
時代が時代なら、この時点でさいとう先生が業界から干されていてもおかしくなかったんじゃ・・・。
ただ、さいとう先生がやった「初手でのタバコふかし」は、
目上の人に対する行動としてはほぼ0点に近い行動ではありますが、
作中でも語られる、小池一夫先生が創作で一番大事にしていた「キャラクターの立ち方」の視点で言えば、
このかましっぷりはある意味「100点」だといえるんじゃないかと。
もしも連載第1話で、
「手塚先生の前でタバコをふかすような主人公」が出てくるマンガ家漫画があったら、
内容が気になって、ぜったいに最後まで読んでしまいそうだ。
前述のように、小池一夫先生は富士山麓に村を作ろうとするなど、
劇画原作者の枠に収まらないほどの壮大なスケールな夢を持っていた男ですし、
この本によると、さいとう・たかを先生は、
33歳の時点で既に自社ビルを持つほどの人気作家になっていたらしい。
いい劇画を作りたいのなら、さいとう先生や小池一夫先生のように、
まずは作り手側も、そのまま劇画の主人公になってもおかしくないような人間を目指してみるべきなのかもしれません。
劇画の神様たちは、やっぱり偉大な存在だった!