6月28日(木曜日)に、
藤子不二雄A先生の初期の作品「わが名はXくん」の第1巻が発売されました。
これから毎月1巻ずつ、全3巻の予定で刊行されます。
<ためし読み>
「わが名はXくん」は、今からちょうど60年前の1958年に講談社の学年誌で連載が始まった作品なのですが、
原稿紛失などの理由でこれまで単行本としてまとめられたことがなく、なんと今回が初の単行本化となります。
これまでは、「愛・・・しりそめし頃に・・・」で作品の内容をちょっとだけ知ることができたり、
唐沢なをき「電脳なをさん」でわが名はXくんのパロディをやっていたことくらいしか作品の情報がなかったので、
今回、こうしてオリジナル版をまとめて読めるというのは、非常にうれしいことです。
で、まあ、さっそく第1巻を読んでみたわけですが、
藤子A先生の絵のタッチが現在の作風を確立する前の、手塚治虫先生を強く意識していた頃のものなので、読んでいて実にほほえましいです。
「わが名はXくん」を描いたのが24歳の頃らしいので、その若さで60年前にこれほどの作品を描いていたってのは、本当にすごいですわ。
当時の子供たちにもこの作品がたいへん人気だったというのも、うなづけます。
あと60年前の漫画というだけあって、
セリフの中に「スイバク」とか「ゲンバク」などといった不穏なワードが出てくるのも、時代を感じさせる。
「小さくても強いもの」の例えとして、当時阪神タイガースで活躍していた吉田義男が例に挙げられているのも、昭和30年代っぽくていい。
まあ、昭和30年代に自分は生まれてないので、あくまでも想像の話ですが・・・。
さらに単行本の巻末には全3回にわたって、藤子不二雄A先生のロングインタビューが収録されていたりもするので、まさに必見の一冊。
この手の単行本はちょっとしたらすぐにプレミアがついてしまうので、定価で買えるうちに買っておくのがクレバーな生き方だ!
さあ、今すぐ本屋さんへ走ろう!!
・・・と、言いたいところなんですが、
この本は税抜きで3500円と結構お高めな値段をしており、「誰でも買える!」といえるような価格じゃないところが多少のネックとして存在する。
それに、何度も言ってますが「わが名はXくん」は60年前の作品なので、今の漫画とくらべて読んでみると、
それなりにアラが目立ってしまうのも、ちょっとした難点だ。
あと、この本はそこそこ分厚いので、全3巻すべて買う場合は本棚の空きスペースとも相談する必要も出てくるぞ。
つまり、今回発売された「わが名はXくん」はそこそこマニアックな藤子不二雄ファン向けの本だと思うので、
「藤子不二雄A先生の作品を読んでみたいけど、どれから手をつければいいですか?」みたいな人が買うには、あんまりおススメできない本かもしれません。
それでもこの本を買って読んでみたいって人は、
同日に電子書籍版も発売されているので、そっちを買ってみるのもひとつの手かと。
なんかネガティブな意見ばっかり述べてしまった気もしますが、
長年、幻の傑作といわれていた「わが名はXくん」の単行本を講談社が出してくれたということ自体は、非常にありがたいことです。
昔の単行本化されてない作品は、国会図書館に行ったり古書店を探したりしないと読めなかったりしますからね。
ホント、講談社には感謝しかありません。
そして、今回の「わが名はXくん」の単行本化がうまくいったら、
「サンスケ(完全版)」や「はりきり首相」の単行本化なんかも、続けてやっていただきたいところです。
わが名はXくんを買った藤子ファンなら、これらの単行本も絶対買うと思うので、実現してくれれば嬉しいんですけどねえ・・・。
そんなわけで、次の「わが名はXくん」第2巻は、7月26日発売予定です。
買い逃し、本屋さんでの予約注文し忘れのございませんように・・・。