佐藤秀峰「Stand by me 描クえもん」の第1巻が発売されました。
この漫画は4月7日まで無料配信されているので、内容が気になる人は今すぐチェックだ!
一見すると藤子不二雄ファンを煽っているみたいな感じのタイトルですが、全部通して読んでみたらなかなか面白かったです。
そもそも、この作品がヤングジャンプで読み切りとして掲載されたことは知っていましたが、その後も物語が続いていたことまでは知りませんでした。
タイトルが某アニメ映画にそっくりなのも、その読み切りが載った時期に「STAND BY ME ドラえもん」が公開されていたからですな。
自分は「藤子作品パロディをしている単行本は全部買って読む」というマイルールを設けているので、こういう普段は読まないような当たり作品に出会えるとけっこう嬉しかったりします。
で、ストーリーとしては、漫画家を目指す青年・満賀描男のもとにある日突然「未来の自分」を名乗るおっさんが現われたことが全てのはじまり。
おっさんは満賀に対し「漫画家なんて辞めろ」と忠告するのですが、当の満賀自身は全く聞く耳を持たず。
その語、なんとか漫画家としてデビューした満賀であったが、次第に漫画業界という名の闇に飲み込まれていく・・・という「現代版リアルまんが道」といった感じの内容だ!
帯にもそう書いてあるから間違いない。
タイトル自体は「STAND BY ME ドラえもん」のパロディとなっていますが、
「未来から来た自分が過去の自分を止めにかかるもうまくいかない」という展開は、どちらかというと同じ藤子不二雄先生のSF異色短編「あのバカは荒野をめざす」の方に内容は近いのかもしれません。
そういえば、「あのバカは~」に出てくる「未来の自分」もこの作品の未来のおっさん同様にハゲていた。
で、少し気になるのが、この漫画の主人公・満賀描男という人物。
どうやら作者である佐藤秀峰先生の過去をベースにしているらしく、この主人公を通して、同じ仕事場で働いていた女性アシスタントとの結婚、某出版社との契約上での争い、某漫画原作者との確執など、アレな裏事情の暴露がてんこ盛りな内容なのも特徴だったりする。
いやあ、なんかヒリヒリしますね!
いろいろとネット上で賛否を呼びそうな内容となっていますが、この漫画を読んだ後に佐藤秀峰先生のwikipediaを見たくなってしまう程度の力は持っていました。
これから先、連載が続いたらアレとかコレとかも描かれるんでしょうなあ。うーんおそろしい。
さらに佐藤秀峰先生も一応は「この漫画がドラえもんのパロディ漫画である」という認識でやっているらしく、
忘れた頃に「描男のくせになまいきだぞ」や「オレ達は描男くんの奴隷じゃねーっつーの」などのドラえもん的パワーワードも飛び出してくるところもいい。
ドラえもんはギスギス展開の空気もあたたかく包み込んでくれる偉大な作品だ!
まあ、いろいろありますが、とりあえずは無料公開されている単行本を読んでみるのをお薦めします。
せっかく無料公開されてるんですし、それを見てから作品の良し悪しを判断してもらっても遅くは無いかと。
あと、個人的にこの作品の好きな場面としては、
人気漫画作品のタイトルをもじった作品群の中で、
ひっそりと自身の作品である「特攻の島」を巻頭カラーにしているところに佐藤秀峰先生の人間臭さを感じさせるのでお気に入りのシーンです。
こういうところ、何かいいですよね。
次回の「特攻の島」は「週刊漫画TIMES」5月12・19日号(GW特大合併号)掲載予定です。お楽しみに。